県北東部にある黒羽地域はかつて那珂川の舟運が盛んで、 江戸や会津方面からの様々な品が行きかった黒羽の町は、 たいそうにぎわったといいます。 黒羽の町にある古い建造物や風情のある町並みには、 往時の賑わいを今なお感じます。 その黒羽の町からおよそ15分ほど北に、寺宿という集落があります。 この地区もまた、歴史と文化の香りを感じるのは 黒羽藩の大名大関氏ゆかりの金厳寺という、立派なお寺があるからでしょうか。 さて、その寺宿には、最近徐々に無くなりつつある習わしが 今でも残っています。 『庚申講(こうしんこう)』と『念仏講』です。 2月上旬の日曜日、地区の寺宿組では 男性たちの集まり「庚申講」が行われました。 9c36463a.jpg
道教をルーツとする庚申信仰では、人間の体には 『さんしの虫』という虫が住み、庚申(かのえさる)の日に 天に昇ってその人の罪を告げ、人間の寿命を縮めると信じられていました。 そのため、庚申の日には男だけで集まって飲食しながら夜を明かし、 『さんしの虫』が天に昇らないよう見張りました。 これが『庚申講』という集まりで、江戸時代に広く行われました。  元々庚申講は2ヶ月おきに1回ずつ、年6回行われていましたが ここ寺宿では、最近では初庚申と仕舞い庚申の年2回になりました。 時代の流れで簡略化されつつあるこうした習わしですが ここでは、まだ続けられている。それは貴重なことです。 今やお年寄りがいなくなると、どんどん無くなっているのですから。 この日は当番のお宅に7名の男性が集まり、家のことや仕事のこと、 集落の行事のことなど様々な話を交わしていました。 お酒を飲む集まりが一番の娯楽だった時代、庚申講は楽しみであり、 情報交換の場でもありました。 そして、庚申講から数日後の昼間 同じく寺宿組では、女性たちで念仏講が行われました。 566426ec.jpg
この日は『ニキ様』と呼ばれる念仏講の集まりで おそらくダキニ天と思われる女神様の描かれた掛け軸をかけ、 お団子をお供えした部屋に集まってお念仏を唱えます。 ef30931b.jpg
この『ニキ様』のほかに、2月中には『地蔵様』、 そして3月のお彼岸には『彼岸念仏』が行われます。 女性たちは地区内の法要でも念仏を唱えに行くのが習わしとなっていて、 こうした習慣を通して集落の結びつきを深めています。 そして、お念仏が終わるとお茶を飲みながら 女同士の話を交わすのも大切な時間でした。 ここ4〜5年の間に、このような念仏講や十九夜講などが急速に失われていますが 寺宿も含むこの周辺の地域には、まだかろうじて残されていると聞き ぜひ番組で取り上げたいと思いました。 集落の住民が、おしなべて同じような生活を送っていた時代が遠くなり、 地域のつながりを確かめ合うことが難しい時代です。 でも、この寺宿ではまだこうした『講』を通じて人々がつながっている。 そんな人々の温かさを、確かに感じたのでした。 e279f167.jpg
この記事の内容は2011年3月7日にに放送終了しましたが、 栃木県のホームページでお聴きいただくことができます。 認定地名、大田原市 寺宿のページはこちら。 ラジオのアイコンがありますのでクリックしてお聴きください。 番組では、皆様からの感想をお待ちしております。 おハガキの場合は〒320-8601 栃木放送「とちぎのふるさと田園風景百選」宛 FAXは028-643-3311 メールはdenen@crt-radio.co.jpまでどうぞ! 「とちぎのふるさと田園風景百選」は栃木県のホームページでもご覧頂けます。